自立・自助では生きていけない労働者が勝ち取った社会保障


静岡市で毎月定例で開いている「学習の友」学習会の報告です。

今回は4人が参加しました。最初に、唐鎌直義氏の「資本主義の思想と社会保障

ーなぜ労働者には必要なのか、大資本家は嫌うのか」を読み合わせしました。

インタビュー形式で、①「自立・自助は資本主義の基本的な考え方であるとはどう

いう意味か」 ②「消費税を社会保障の財源にする事をどう考えるか」 ③「社会保

障は本当に困っている人だけのためにあるのか」のそれぞれの質問にわかりやすく

答えてくれました。特に印象に残ったのは、「社会保障は富を国民に還元する水路

で、労働者にとって賃金と社会保障はともに必要、これが無いと長期的な展望・希

望を持って生きられない。」「社会保障は労働条件の最低基準」「消費税を社会保

障の財源にしたら、社会保障は社会保障でなくなる。」「社会保障は、国民だれも

が必要な時に受けられるものだ(普遍主義)」でした。また、「GDPで見た世界」の地

図は、世界第3位の経済力を持っている日本の社会保障が充実しないのは税金の

取り方、税制が間違っているからだと示しています。

次に、原冨悟さんの「社会保障の歩みと労働組合ー働く者のたたかいが果たした

役割とは」の中で、社会保障制度や理念はどうやって生まれ発展してきたのか、憲

法が労働組合に特別な位置を与えている理由、労働者状態の悪化の中で社会保

障運動発展のために労働組合運動の前進が必要な理由、等々を学びました。

◇次回学習会は次のとおりです。4月号を持ってどなたでもお気軽にご参加ください。

・日時 4月16日(水) 午後7時から

・場所  静岡県評会議室

民医労静岡支部「勤通大基礎コース」学習会


3月11日(火)午後5時45分より学習会を行いました。受講生5人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回のテーマは「現代社会と社会変革」です。

 

 「現代社会と社会変革」

●現代はどのような時代か

1.20世紀の人類史的な変化

第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争

① 植民地体制の崩壊

20世紀初頭:アジア・アフリカ・ラテンアメリカは完全に分割支配

第二次世界大戦前:世界の独立国は約60ヵ国(現在は196カ国)

1960年:国連総会で「植民地独立付与宣言」(植民地支配の不当性確認)

20世紀後半:植民地支配の完全な崩壊

② 民主主義と人権の発展

・国家の形態が君主制から民主共和制に転換(20世紀に君主制を廃止:66カ国)

・現代の人権=自由権(政治的市民的自由)と社会権(生存、教育、労働)の結合

③ 平和の国際機構と「戦争の違法化」原則

・国際連盟、国際連合、非同盟運動

・不戦条約:1928年「戦争放棄にかんする条約」(日本国憲法の平和原則)

・国連憲章:「戦争の違法化」原則

2.現代世界を左右する3つの流れ

①資本主義の限界が問われるようになった

・資本主義は恐慌や不況を乗り越えることができず、貧困問題を解決できない。

・地球の環境問題などの深刻化によって「人類の生存」の危機が現実的な問題になる。

・南北問題が深刻になっている。

②アジア・アフリカ・ラテンアメリカの社会変革と地域の自立と連帯をめざす共同体づくり

・TAC(東南アジア友好協力条約:1976年):ASEANが中心となり締結、紛争の平和的解決

・SCO(上海協力機構:2001年):中央アジアにおける地域共同体

・CICA(アジア相互援助・信頼醸成会議:2002年):アジア総人口の90%、21ヵ国加盟

・UNASUR(南米諸国連合:2007年):経済協力、核兵器のない世界、国連憲章の尊重

・AU(アフリカ連合:2002年):政治的経済的統合の実現、紛争の予防解決

④ 社会主義をめざす国ぐにの動向

・中国、ベトナム、キューバ

・「市場経済をつうじて社会主義へ」という路線(中国、ベトナム)

●現代国家の特徴と現代の民主主義

1.現代国家と支配のしくみ

○国家独占資本主義と現代国家

経済的支配階級=財界・大企業(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)

財界と国家の「癒着」

○執行権力の拡大強化

執行権力=政府・官僚機構、軍事機構

議会制度の空洞化(議会から執行権力への重心移動)

○三者同盟(三角同盟)

三者同盟=政・財・官の癒着構造

政権政党の幹部、財界、官僚機構の上層部(原発利益共同体)

○2つの統治方法

①国民を力で押さえる権力的支配(警察や軍隊による弾圧)

②国民を誘導し一定の方向に統合(企業、学校教育、マスメディア、宗教組織)

○国家形態と民主共和制

・君主制:世襲の君主を元首とする(国の数で世界の15%、人口で8%)

・共和制:有権者から選ばれた代表を通じて政治を行う(大統領独裁、民主共和制)

○民主共和制が「最良の国家形態」

・男女普通選挙にもとづく議会制民主主義が確立している共和制、三権分立

○選挙制度と民主的改革

民主共和制を実現するためには選挙制度の民主化が大事、比例代表制が民主的

 

2.現代の民主主義と人権

○民主主義とは

国民主権原則にもとづく政治制度

政治制度、国民運動、民主主義思想という3つの側面

○人権とは

人間らしく生きる権利、幸福を追求する権利

○市民革命(ブルジョア革命)と近代民主主義

・イギリス名誉革命(1688年)、アメリカ独立宣言(1776年)、フランス革命(1789年)

・近代民主主義=国民主権や基本的人権の尊重などの政治制度と思想

○社会権の登場

・社会権=基本的人権のうち、国家によって人間らしい生活を保障させる権利

生存権(社会保障、教育、労働権、労働基本権)

 

3.民主主義の発展と社会主義

○大企業への民主的規制=資本主義の枠のなかでの民主的改革

・大企業の社会的責任:労働条件、雇用、中小企業、地域経済、環境

・法律による規制を大企業本位から国民本位に

・民主主義的改革の徹底後、資本主義の矛盾を解決する社会主義的変革を提起

○空想的社会主義

・サン・シモン:地主・金利生活者の支配に反対

・フーリエ:産業や暴力による搾取や貧民の発生を告発

・オーウェン:失業問題の解決のために共同体建設を実験

○科学的社会主義の成立

・マルクス:資本主義の分析と批判、労働者の人間的発達と社会変革

・エンゲルス:イギリスの都市貧困者の調査、資本論の完成

○社会主義を考える視点

・ソ連社会の変質:スターリンによる国民弾圧と粛清、大国主義的覇権主義

・資本主義の成果を受け継ぐ:生産力、議会制民主主義、人間の個性

・利潤第一主義の克服:貧困、失業、不況、南北問題、地球環境問題の解決

○生産手段の社会化を土台とする社会

・生活手段は対象外、生産者が主役

 

●現代の社会変革と労働者・国民のたたかい

1.現代における階級と階級闘争

○労働者とは

労働力を売り、働いて賃金を得て生活している人。生産の担い手。

○階級闘争の3つの側面

・経済闘争:賃上げ、経済的利益をまもるたたかい

・政治闘争:法律や制度の改良、平和と民主主義の擁護、政治権力の獲得

・思想・文化闘争:資本家階級の思想攻撃とのたたかい

○労働者階級の政党

全国的な階級闘争、政治闘争を推進する組織。

 

2.現代の社会変革の特徴とその推進力

○多数者革命

多数者による多数者のための革命(2010年:労働者82.1%、自営業12.9%)

○議会をつうじる革命

国民の多数の支持による議会をつうじる合法的な変革(政府、官僚、軍事機構)

○統一戦線による変革

立場の異なる多くの勢力が、共同の目標、共同の利害にもとづいて作る組織

○日本における統一戦線の展望

地域的統一戦線による革新自治体(1960年代~70年代)、全国革新懇(1981年)

 

3.労働組合運動の基本原則

○なぜ団結が必要か

生活と権利を守るために団結する(賃金抑制、雇用破壊、生活破壊)

○労働組合の誕生

イギリス:18世紀後半、産業革命、工場、労働者の増大、労働組合

1799年 労働組合を禁止する団結禁止法を制定

1824年 団結禁止法撤廃

1871年 労働組合法を成立

 

○労働組合の性格と組合民主主義

①労働者なら誰でも参加できる幅広い組織

②労働者階級の要求実現のために資本家階級とたたかう組織

労働組合の民主的運営が保障されることによって大きな力を発揮できる

○民主的で初歩的な3原則

①要求にもとづく団結、②資本からの独立、③政党からの独立

○政党との関係

①組合員の政党支持の自由、政治活動の自由を保障する

②相互の自主性を認め合い、一致する要求・政策で協力共同する

○労働組合の任務

①経済闘争:賃金や労働条件の維持・改善

②政治闘争:悪法に反対し労働者の利益になる法律の制定、平和と民主主義、政治革新

③思想・文化闘争:労働者・主権者としての自覚、権利意識

 

 4.現代の多様な社会運動

○平和運動

原水爆禁止運動、ベトナム反戦運動、イラク戦争反対運動、基地反対闘争、9条の会運動

○市民(住民)運動

環境問題、原発問題、資源問題、人権擁護

○社会保障運動

医療・介護、生活保護、失業保障、奨学金制度、住宅制度

○女性運動

1975年:国連婦人年

1979年:女性差別撤廃条約(日本は1985年に批准)

1985年:男女雇用機会均等法(古い差別から新しい差別への転換)

○中小企業者運動

中小業者の切捨てや大企業の横暴に反対し、中小業者の営業と生活をまもる

○社会運動と労働運動との関連

社会運動と労働運動の連携によって、社会と政治を変革する可能性が生まれる

以上