未来社会を考える


8月22日「あざれあ」において、静岡県労働者学習協会第49回総会記念講演が行われました。勤労者通信大学の基礎コースにおける未来社会論が大幅に書き換えられたため、その内容について、山田敬男氏(労働者教育協会会長・現代史家)が「未来社会を考える」と題して報告しました。以下に概要を記します。

今度の教科書は、階級の論理と人間の視点を結合して全体がまとめられています。

コロナ禍のなかで、格差と貧困が深刻になり、とくに女性労働者やひとり親家庭とその子どもたちなど“社会的弱者”が深刻な事態に追い込まれています。また地球温暖化が深刻になっており、産業革命時と比較して、21世紀末に3度上がってしまうことになり、このままでは人々の生活は破壊的なダメージ受けることになります。こうした問題を克服するには、資本主義社会の限界を乗り越える未来社会を検討することが国民的課題になります。

資本主義社会におけるたたかいの成果は、「新しい社会の形成要素」として継承されます。たとえば、大幅賃上げと全国一律最低賃金制の実現、労働時間の短縮、社会保障制度の改革、両性の平等と同権など「ルールある経済社会」をめざすたたかいは、やがて未来社会の「形成要素」として継承され、発展していきます。

社会主義的変革の中心は生産手段の社会化です。そこで一番大事なことは「生産者が主役」という原則が貫かれることです。かつてのソ連のように、形だけ「国有化」しても、労働者が管理や運営から排除されていては「社会化」とは言えません。生産手段の社会化によって人間による人間の搾取が廃止され、生活の向上とともに、労働時間の抜本的な短縮によって、自由時間を十分に持つことが可能になり、人間の全面発達を保障する社会の土台が出来ます。生産の動機や目的が、利潤第一主義から解放され、人間と自然、社会の「調和ある生産力の発展」が可能になります。

1991年に崩壊したソ連は、社会主義とは無縁な「非人間的な抑圧型社会」でした。1917年にロシア革命が成功しますが、1930年代に革命の大義が失われ、スターリン独裁の専制社会に変質しました。スターリン以後のソ連は、個人独裁体制から共産党政治局による集団的専制体制になり、「非人間的抑圧型社会」を継続しました。

社会主義的変革の出発点においても、その後のすべての段階で、国民多数の合意が必要です。選挙での国民多数の意思表示を抜きに、政権が勝手に社会主義に前進するようなことは絶対にあってはなりません。

労働者階級の階級的自覚とは、自分が労働者であるという自覚とともに、資本主義社会を変革し社会主義社会を実現することによって、人類の真の解放を実現するという労働者階級の歴史的使命を理解し、全国的に団結し、政治を変革しなければならないことを理解することです。

日本社会の変革や未来社会の展望を理解するうえで、「二重の歴史的見通し」を持つことが重要です。第1に、資本主義の枠のなかでの民主主義革命によって、真の「独立」と民主主義の日本をめざすという自覚であり、第2に、搾取のない未来社会=社会主義をめざすという自覚です。私たちのめざす未来社会は、人間の“解放”と人間の“自由”の実現にあります。

報告する山田敬男氏

第4回「多国籍企業と日本経済」学習会「多国籍企業研究の視点について」を読み合わせ、意見交換をする


静岡市社会科学学習会は、8月17日(火)「多国籍企業と日本経済」学習会を「アイセル21」で開きました。テキストは「多国籍企業・グローバル企業と日本経済」を使いました。読み合わせの後、意見交換を行いました。

 意見交換では「テキストの49ページに『政府の資本保有割合が10%超か、大株主であるか、もしくは黄金株を有するかなどによって』と書かれているが、この中の黄金株とは何か」「黄金株とは、株主総会で会社の合併などの重要議案を否決できる特別な株式のことで、拒否権付き株式ともいわれる」「テキストの中にある多国籍公企業とは何か」「中国などが高速鉄道を輸出している。この鉄道の建設も中国が行う。この工事を行う中国の企業は中国の国有企業で、これなどは多国籍公企業ではないか」「多国籍企業の社会的責任と規制の所で、あらためて世界では企業による人権侵害に対する社会的な規制が強くなっている事をあらためて知った。日本では企業に対して労働者の人権を守るという事が弱いのではないか」「SDGsが掲げる17項目の目標は正しい事だと思う。日本の企業の多くも賛同していると言われるが、それは単なる企業のイメージ戦略に利用しているだけではないかと思う」「ナイキの児童労働事件は、90年代にインドネシアの少女に対して過酷な労働を強制していた事がアメリカで暴露され、製品に対する不買運動が起きた。ナイキは初めてCSRの取り組みを始めた。しかし、ユニクロが中国国内で過酷な労働を強いている事が暴露されても、日本では不買運動が起きなかった」などの意見が出ました。

◆次回は、日時、9月21日(火) 午後6時30分~8時30分。会場、「アイセル21」第42集会室。内容、「米中デジタル多国籍企業の覇権競争-米中貿易摩擦と日本企業」。持ち物「多国籍企業・グローバル企業と日本経済」。

2021年 第5回『資本論』第2巻学習会 第3章「商品資本の循環」第4章「循環過程の3つの図式」を学習する


静岡市社会科学学習は、8月12日(木)『資本論』2巻学習会を開き、第3章「商品資本の循環」第4章「循環過程の3つの図式」を学習しました。報告の後意見交換をしました。

意見交換では「報告の中で、ケネーの経済表が取り上げられ、その読み解きがあるが、初めて聞いた」「詳しい商品資本の循環図式が書かれているが、何を図式しているのか」「商品資本の循環は、商品から始まるが、この商品は価値増殖された商品で、その内訳が次に書かれている。それが貨幣に交換されるが、その貨幣も増殖された価値が含まれているので、貨幣もGとgとその内訳が書かれている。そして、単純再生産の場合にはGがWとなる。gは資本家の消費になる。拡大再生産の場合には、gの一部が資本とる」「報告の中で突然、個別企業の話でなく、社会的な再生産の話が出てくるのは何故か」「マルクスは、この商品資本循環を使い社会的再生産を第3篇で論じている。それは何故この商品資本循環で可能なのかを論じているので分かりにくさがあると思う」「報告の中でC+V+Mが出てくる。何を言おうとしているのか」「商品の価値内訳は、C+V+Mである。商品資本循環は、商品から始まる。この商品が売りさばかれて次年度の再生産が準備される。この需要がどこから出てくるのかと言うと、それは最初の商品が貨幣へと交換される所にある。価値の内訳は、商品価値の内訳は何かと言うと、CとVとMしかないのです。そのCの部分は、次年度の生産手段を購入する貨幣であり、Vの部分は次年度の労働者を雇用する原資となる。そしてMは資本家の利潤となり奢侈品を購入する原資となる。この事を説明している」など意見が出されました。

◆次回は、日時は、8月26日(木)午後6時15分~8時。会場は、「アイセル21」第41集会室。内容は、第4章「循環過程の3つの図式」。持ち物は、マルクス『資本論』第2部(新版・新日本新書版の第4分冊)

戦前の労働運動は果敢な活動を展開したが何故侵略戦争を許したか


「学習の友」学習会が、8月11日に静岡市内で開催されました。

今回特集記事の最終に掲載された、「なぜ労働者は戦争を支持したのか―1930年代の体験から学ぶ」(佐々木啓茨木大学教授)の記事を主に、読合せ討論しました。1929年の世界恐慌により、日本でも企業の倒産・操業短縮が起こり、失業する労働者が激増します。農村でも農作物価格の下落と冷害凶作により、飢餓に瀕する人々が続出します。こうした危機の中で労働組合は果敢に運動をすすめ、労働争議も増え待遇改善を勝取る事例もありました。しかし、1925年に制定された治安維持法によって、社会運動や労働運動への弾圧が広がり、労働組合の組織率も低下、争議も減少していきます。最終的には産業報運動に労組も吸収され、自主的。主体的な活動は厳しく制限されていきます。その一方で右翼的な国家改造運動などが、政治社会に対する民衆の不満を取り込み、軍国主義者のテロ活動や、中国侵略戦争を支持する方向にすすんでいきます。1930年代の歴史からは、労働組合を守り」、労働運動を発展させることが、戦争とは異なる道を切り拓く重要な契機となると指摘します。討論では次のような意見等がありました。「なぜ労働者は戦争を許したか。」「確かに、日露戦争で大きな犠牲を払って地域の権益を勝取ったものという意識は強かった。」「自分たちを一個上に見ていたと思う。今もそうだ。」「世界の流れが、(先進国自身が)植民地をつ持ったことを自己批判するようになったのに、日本は認めようとしない。そういう政府で良いのかということだ。占領国のアメリカが、天皇を含むA級戦犯を利用するために見逃してきた。そして植民地問題を曖昧にした。戦前の頭を引きずっている連中がやっているので、頭を挿げ替えなければならない。また、国民の意識もその中で教育されており、その転換が一番大変なことだ。」「自民党政府は、戦後途中から軍人・軍属(A級戦犯を含む)に恩給を60兆円も支給してきた。ところが、空襲で死んだ人とかは一切出してない。」「多国籍企業に権利として人権を保障する。人権を侵すようなことは許されないという考えが確立してきているが、日本は消極的だ。世界も変化している。日本は力一本やり。保守的指導層は無頓着なのは何故か。」「静岡労研の学習会で、日本の法曹界の後進性について指摘がされた。刑法は家父長制の時代にできており、女性問題については遅れた内容で、たとえ女性の裁判官が増えても、法律が変わらなければ変わらないとのことだ。」「ジェンダー平等、セクハラについては左側のグループでも、慣習・慣行にとらわれて脱却できていない。日弁連でも理事の男の枠を減らせない事例のお話もあった。」「ヨーロッパで多いのは、制度として男女の枠を決めたるやり方で、意識も変えていくやり方だ。」「オリンピックでは日本的なおかしなことがたくさん出て、日本の中では『許されている』のに外国から見られるので変えてきた。常識がいかに違うか分かった。」「日本では、人間関係の親分子分の関係で成り立っている。ドンの言うことは誰も反論できないみたいな。そういう雰囲気ってこちらの世界にもある。そういう意識を再調整していく必要がある。」「ヨーロッパの人は、正しいか間違っているかで判断する。日本人は恥ずかしいかどうかで判断する。人の目を見て行動する。」「日本の場合、セクシャルハラスメントの法的定義がない。もう一つは慣習・慣行で縛られる。」「慣行・慣行がなぜ生まれるかは、経済的権力を持った者によって意思決定がされる、それが男性だということでした。」出席者から、それぞれが最近学んだことを出し合い、討論をすすめることができ、大変深まった、盛り上がった学習会となりました。

「日本近現代史を読む」第12回学習会 第10章「世界恐慌と軍縮破綻への道」を読み意見交換をする。


静岡市社会科学学習会は、8月10日(火)「アイセル21」で「日本近現代史を読む」第12回学習会を開き、第10章「世界恐慌と軍縮破綻への道」北伐と山東出兵、世界恐慌と民衆の生活、ロンドン条約と統帥権干犯問題を読み合わせ、意見交換を行いました。

 意見交換では「テキストで『辛亥革命後の中国では、軍人を指導者とする北京の軍閥政府が大きな力を持っていました』と書いてあるが、このような状況が生まれた理由は何か」「1916年から1928年にかけて中華民国が内戦状態となっていた時期で、袁世凱の死を契機に北京政府の統制が失われ、各地の軍閥が集合離散を繰り返す軍閥割拠の時代となった」「テキストで『田中内閣は、この事件を『満州某重大事件』と呼んで真相を隠しました。田中首相は、一度は責任者を厳重に処罰する旨、昭和天皇に上奏しましたが、軍部や閣僚はら反対されて責任者の処分をあいまいにしたため、天皇や天皇側近から厳しく叱責され、1929年に総辞職しました。天皇が首相を直接に叱責し、内閣が崩壊したのは初めてのことでした』と書いてあるが、なぜ天皇は叱責したのか」「テキストの別の箇所で『天皇が田中内閣を崩壊に追い込むほど怒ったのは、張作霖を暗殺した責任者を問うたからではありません。直接には、田中が前後で違うことを天皇に上奏したことが天皇の怒りの原因なのですが、これは、張作霖爆殺事件の処理だけを天皇が叱責したというよりも、田中義一の政治手法、天皇にたいする田中の姿勢に、天皇と牧野伸顕内大臣ら宮中グループが強く反発した結果』と書かれている」「金本位制とは何か」「通貨と金の交換が保証されている制度の事でこれで通貨価値の安定をはかる仕組みの事を言う」など意見が出されました。

◆次回は、日時は、9月14日(火)午後1時30分~3時30分。会場は、「アイセル21」第42集会室。内容は、第11章「大陸への膨張と政党政治の後退」。持ち物は、「増補改訂版 日本近現代史を読む」です。