本の紹介


「非正規雇用と労働運動-若年労働者の主体と抵抗」伊藤大一著、法律文化社

「本書は、2004年に徳島県で結成された請負労働者組合の7年間にわたる調査をもとに執筆された。」と冒頭に書かれています。トヨタの2次下請の請負労働者たちが、どのように労働組合に出会い、そして直接雇用から正社員化を勝ち取っていったかを、綿密な調査に基いて紹介しています。各労働者の生い立ち、仕事へのプライド、趣味や遊びにいたるまで、一人一人の人間像が浮かび上がってきます。「非正規労働者の組織化」と言っても、それほど簡単なことでないのは誰もがわかっている中で、成功した例として、多くの教訓を投げかけています。(多田)

民医労静岡支部「勤通大基礎コース」学習会


10月22日(火)午後5時45分より、約1時間にわたり学習会を行いました。受講生7人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。

今回のテーマは「社会の土台にある物質的生産」と「階級闘争と階級社会のあゆみ」です。

 

社会の土台にある物質的生産

1.社会と歴史のとらえ方

英雄史観、意識史観

史的唯物論(唯物史観):物質的生活手段(衣食住)の生産が基礎

人間は生活し、生産しなければならない:(生活手段の生産、生産手段の生産、人間関係の生産、欲求の生産、意識の生産)

社会的存在が意識を規定する:「黒人は奴隷である」という主張において、黒人=自然的存在、奴隷=社会的存在、黒人が奴隷になるのは、一定の社会関係の下においてだけである。(反省関係)

 

2.物質的生産と階級社会

生産力=労働+労働手段+労働対象

(生産手段)

生産関係=生産における人と人との関係、生産、分配、交換、消費の関係

生産手段の所有関係(生産手段を持っている人と働く人の関係)

生産力に見合った生産関係、所有関係がつくられる

石器・弓矢=原始共同社会、金属器・農耕=奴隷制・封建制、機械制大工業=資本主義

階級=生産手段の所有関係の地位、労働組織での役割、富を受け取る方法と大きさで区別

搾取=生産手段を所有する階級が、直接的生産者の労働の成果を無償で奪うこと

 

3.土台と上部構造

土台=生産諸関係の総体(経済的機構)、

上部構造=政治的・法的制度や社会意識諸形態

国家=階級支配のための権力組織、(軍隊、警察、官僚組織)

イデオロギー=体系化された思想や理論(法律、政治、宗教、芸術、哲学)、

社会の支配的な思想は支配階級の思想である

土台が上部構造の基本的性格を決める、上部構造は土台に反作用する

 

階級闘争と階級社会のあゆみ

1.階級闘争こそ社会発展の原動力

階級闘争=階級間の物質的利害の対立を基礎とするたたかい:奴隷蜂起、農民一揆、ストライキ(労働運動)

階級闘争の3つの側面:経済闘争、政治闘争、思想・文化闘争

生産力発展のばねとして作用していた生産関係が、やがて足かせに転化する

 

2.社会発展のあゆみ=前近代の階級社会

原始的な共同社会から、私的所有にもとづく階級社会への転換(6000年前)

階級社会の成立:農耕生産力の発展、首長、家族、支配と従属

「丸ごと奴隷制」の社会、ギリシア・ローマ型の奴隷制社会、封建制社会

奴隷や農奴のたたかいは、歴史を前進させる役割をはたしたが、彼らは次の社会における生産力の中心的担い手ではなかった

 

3.社会発展のあゆみ=近代の階級社会・資本主義

16世紀なかば:毛織物生産、マニュファクチュア(工場制手工業)、

16~18世紀:絶対主義国家、海外からの収奪

17~18世紀:市民革命(イギリス、フランス、アメリカ)

18世紀後半~19世紀はじめ:産業革命

資本主義の歴史的役割=生産力の飛躍的発展と独立した個人

資本主義の限界:貧困や格差、環境破壊、拝金主義、孤立した個人

 

*環境問題を考える

地域で起きる環境破壊:

1960年代後半:水俣病(熊本、新潟)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病(富山)、

1970年代:大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音

1980年代:ハイテク産業による土壌汚染、ダイオキシン汚染

地球規模の環境汚染:地球温暖化、酸性雨、海洋汚染、砂漠化、熱帯雨林の減少

環境破壊の理由:自然の復讐、利潤第一主義

経済のあり方を、自然と調和的なものに変えていくことが、21世紀の人類的課題

 

労働運動の本格的前進をめざし「学習の友」創刊60周年を契機に大いに広めよう!


静岡市の「学習の友」学習会報告

今回は3名が参加しました。10月号は「友」創刊60周年特集として、「学ぶことを

力にたたかう」をテーマとしています。

最初は、山田敬男労学協会長の「働く仲間とともに歩んできた『学習の友』」を読

み合せ討論しました。「友」は1953年10月に創刊されています。当時は朝鮮戦争

のもと階級的労働運動が大きく後退した時期です。これまでの労働運動のあり方を

見直し、復活に向けて担い手の育成、組織の再建が課題となっていました。「友」

は59年以降急速に増えます。65年には10万部台となります。これは、三池・安保

闘争など、その時々の労働運動のたたかいと結びついた、学習運動の広がりがあ

ったことの反映です。しかし、第二の反動攻勢が開始された70年代後半以降、減

誌が続き現在にいたっています。「友」は単なる情報誌ではなく学習誌として、労働

者のたたかいに寄与できるものです。「友」の魅力を多くの仲間に広め、今後の運

動の前進を図ることが、今求められています。

次は、石川康宏氏の「理論学習のすすめ-政治の激動を深くつかむ」をやりまし

た。2009年以降の政治の変化を分析し、理論は現実を正確にとらえるためのもの

であり、理論学習に本腰を入れようと訴えています。最後は、望田幸男氏の「ナチス

による『憲法の機能停止』の歴史的真実-『麻生発言』によせて」をやりました。

次回学習会は次のとおりです。11月号を持って

どなたでもお気軽にご参加ください。

日時 11月13日(水) 午後7時から

場所  静岡県評会議室