民医労静岡支部「勤通大基礎コース」学習会
- 2014年02月21日
- 勤通大学習会
2月19日(水)午後5時45分より学習会を行いました。受講生7人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回のテーマは「資本主義の発展と現代」です。
●独占資本主義および国家独占資本主義
1. 資本主義の発展と独占資本主義
○独占段階の資本主義(19世紀終わりころから)
独占=少数の大企業が、ある部門の商品の大部分を生産し、供給することをつうじて生産
と市場を支配している状態
○独占資本主義の5つの特徴
①生産の集積・集中と独占
自由競争の独占への転化
独占の形態:カルテル・シンジケート(協定)、トラスト(企業合同)、コンツエルン
②銀行の新しい役割と金融資本の形成
金融資本:独占的銀行資本と独占的産業資本が、融合・癒着した新しいタイプの資本
6大企業集団(三菱、三井、住友、富士、第一、三和)90年代後半に解消・再編
3大メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)
③資本の輸出
過剰資本を外国に投資、 直接輸出(現地で工場をつくる)、間接輸出(現地企業への投資)、
国家資本の輸出(ODA:政府開発援助)
④国際独占体による世界の経済的分割
国際独占体:各国の金融資本のなかから世界市場を少数の独占企業によって支配する
⑤帝国主義国による世界の領土的分割
国際独占体は、自らの権益をまもり、拡大していくために、自国の政府を動かして外国の領土を奪い、植民地を拡大させてきた。経済的分割が世界の領土的分割へと進む
第一次世界大戦:勢力圏と植民地の再分割をめぐって帝国主義国どうしが武力衝突した帝国
主義戦争
金融寡頭制:少数の金融資本が、それぞれの国の経済・政治を支配すること
国内では民主主義の破壊(政治反動)、海外では他民族の抑圧
2.第2次世界大戦後における独占資本主義国の変化
第2次世界大戦=帝国主義戦争としてはじまったが、民族解放戦争や、反ファシズム民主主義戦争という面をもつ複合的な性格の戦争
第2次世界大戦後:ブレトンウッズ体制=アメリカを中心にする国際経済秩序(IMF+GATT)
独占資本主義の変化:①民主主義を求める国民の力が強化された
②植民地支配が崩壊して諸国の独立が達成された
③アメリカの力が圧倒的となった
3.国家独占資本主義の形成とその基本的しくみ
○国家独占資本主義の形成(1929年~)
国家独占資本主義=金融寡頭制のもとで国家の力を経済分野に介入させて、経済危機を先
送りし、経済成長を実現することで、大企業の搾取と支配を維持するしくみ
ケインズ政策:国家の経済的力を活用して、国内の総需要を管理・拡大し、失業の発生を
回避して経済成長をはかるという政策。(有効需要創出政策)「大きな政府」
1980年代以降、「小さな政府」が主張される。
新自由主義が登場。大企業の利益拡大のための自由放任政策。
○国際独占資本主義の基本的なしくみ
①国家財政の動因(大規模な公共事業)
②金融政策を手段とした経済管理、政策運営(金融緩和・引き締め)
③国公営企業や国有株式(国家による主要企業の株式所有)の活用
④経済・産業・労働政策とその法制化(企業法制、特定産業の振興、労働法改悪などの政策をふくむ)
○社会保障制度と所得再分配(労働者・国民の運動や政治的な力を反映)
ヨーロッパ:福祉国家=社会保障制度の拡充で国内需要を安定させ、経済成長を実現
アメリカ:軍事国家=軍事支出を中心にした内需拡大策
日本:土建国家=大型公共事業中心の内需拡大策
4.国家独占資本主義が意味するもの
① 独占資本主義の矛盾の深刻さをあらわす(国家の支えなしに資本主義を維持できない)
② 資本主義の次の社会(社会主義)に移行する物質的条件をつくりだす
(生産手段の集中、独占禁止法などの経済制度、社会保障制度、民主的規制の体系)
③ 経済と国家のあり方についてさまざまな矛盾を顕在化させ、民主的改革の条件を成熟させるとともに、社会変革を進める主体的勢力を強化していく
5.資本主義の基本的矛盾とその解決の道
・資本主義の基本的矛盾=利潤追求が推進力になって生産のための生産に突き進み、生産を社会的に制御できないこと(貧困と格差のひろがり、世界的な恐慌、環境破壊)
・基本的矛盾の解決=生産手段を社会化する(生産者が生産を管理していくこと)
●経済のグローバル化と日本経済
1.グローバル経済の特徴とアメリカの世界経済支配
○グローバル経済とアメリカン・グローバリゼーション
グローバル化:経済の地球規模化(1990年代以降、急速に進行)
政治・経済・文化・生活などの相互依存的な関係が世界的規模で再編
「アメリカン・グローバリゼーション」:アメリカを中心とする多国籍企業の世界経済への支配強化を軸として推進
○現代のグローバル経済の特徴
① 多国籍企業が国際独占体としてグローバルに運動している
発展途上国での低価格での競争、日本での賃下げと非正規労働者の増大
② 過剰な貨幣資本が蓄積されるなかで、投機的なマネーがグローバルに運動している
サブプライム問題:アメリカ発の金融危機が世界的不況と失業の拡大へ
○グローバル化をめぐる2つの流れのたたかい
・アメリカを中心とした多国籍企業の利潤追求を強化させる経済秩序の押し付け
・民主的な国際経済秩序を確立(労働者の権利をまもり、貧困と格差をなくし、金融経済を規制し、地球環境をまもる)
2.日本経済の特徴と海外進出を強める日本企業
○ルールなき資本主義
長時間労働、雇用保障、女性差別、外国人労働者差別
法人税、引当金・準備金制度(利益を小さく見せかけて税金を軽くする)
○対米従属の資本主義
① 日本政府はアメリカ国債を買い、ドルの暴落を防ぎ、アメリカの財政破綻を救っている
② アメリカの経済界の意向に従って経済政策をおこなっている(不良債権処理、郵政民営化、農産物自由化)
③ 日本が依存する資源の多くは、アメリカの影響下にある国・企業からのもの
④ アメリカの主導のもとで、東アジアでの域内協力において主導権を握ろうとしている
(ASEAN+日本、中国、韓国、モンゴル)
○海外進出を進める日本企業
グローバルな生産体制の構築、下請け中小企業の切捨てと再編、工場閉鎖、
合併や業務提携による再編、リストラ、賃金や雇用制度の変更、労働者の分断
2004年度の製造業全体の海外生産比率:16.2%、現地従業員数:406万人
2011年度の製造業全体の海外生産比率:18.4%、現地従業員数:523万人
3.新自由主義と財界主導の「構造改革」路線
① 労働法制の規制緩和による「働くルール」の破壊(派遣法、限定正社員、国家戦略特区)
② 社会保障の国民負担の拡大と給付削減(雇用保険、年金、医療保険)
③ 国民生活に不可欠な部分を民営化し、企業の利潤の場に転換(郵政、保育)
④ 農業や自営業などを「生産性が低い」として縮小(農業の危機、地域経済の衰退)
⑤ 市町村合併を強行して地方交付税を削減、公共サービスの低下
⑥ 高額所得者と大企業への減税
4.日本経済の民主的改革の方向
日本経済の安定的な発展のカギは、個人消費を拡大させること
国民生活中心に切りかえる民主的改革
① 経済活動に民主的ルールをつくり、まもらせる
② 財政・社会保障の民主的改革
③ アメリカ追随の経済政策をあらため、多国籍企業中心のWTO体制など国際経済の変革につとめる
以上