「哲学学習会」兼「勤労者通信大学開校式」の開催

学習会4月5日(土)、静岡県評会議室において、「哲学学習会」兼「勤労者通信大学開校式」が開催されました。参加者は24名で、ほぼ満席の状態でした。最初に塚平静岡県労働者学習協会副会長が主催者あいさつを行い、その後、①「唯物論」(長坂氏)、②「弁証法」(箱崎氏)、③「史的唯物論」(原田氏)の順番で、講演と質疑応答を行いました。最後に、勤労者通信大学の案内を行い閉会しました。(写真は「唯物論」を講演する長坂氏)

質問では「女性が外で働くことの意味は」「三浦梅園の思想をどうとらえるか」「ルールある資本主義を作る運動と社会主義をめざす運動との関係は」などがありました。

◇講義資料(PDF)

哲学学習会①唯物論

哲学学習会②弁証法

哲学学習会③史的唯物論

 

勤労者通信大学スクーリング兼憲法学習会Ⅲ 「日本国憲法と働くルール・社会保障」

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勤労者通信大学スクーリング兼憲法学習会Ⅲが、2013年8月31日(土)15:00から静岡県評会議室において開催されました。勤労者通信大学受講生と一般聴講者を含め17名が参加しました。講演は「日本国憲法と働くルール・社会保障」、講演者は原冨悟氏(埼玉学習会議代表委員、元埼玉労連議長、勤通大労組コース教科委員、労働者教育協会常任理事)です。

講演内容は以下の通りです。

1.働くことと社会保障

(1)労働者の貧困を想像してみる

埼玉県内中小企業の平均賃金は、正社員312,829円(残業20,627円含)、男性336,666円、女性240,035円です。これに対し、S市の生活保護は、4人家族で301,270円(教育・住宅扶助・養育加算込み)となっており、正社員の平均賃金で残業がなければ、生活保護以下です。また母子家庭の3人家族で、生活保護293,940円(教育・住宅扶助・養育加算込み)となっており、女性の残業込みの賃金でも足りません。

就労世帯の10.4%、就労母子家庭の7割が生活保護基準以下の収入です。また稼働世帯で、可処分所得が生活保護基準よりも低い世帯は25.1%です。

埼玉県内の失業者数は17万人、このうち就職者は6千人、失業給付受給者は2.9万人(12年、月平均)となっています。

日本の自殺率は10万人当たり25人ですが、生活保護受給者の自殺率は55人と倍以上あります。

年収200万円で、国保料は27.4万円、国民年金18万円を支払わなければならず、社会保障負担が貧困に追い打ちをかける制度となっています。

(2)「構造改革」がもたらした格差構造

1997年と2010年を比較すると、企業の経常利益は15兆円から25兆円、大企業の内部留保は143兆円から266兆円と増加しています。また企業が保有する現金・預金は12年度末で225兆円と過去最大となっています。

これに対し、民間の平均給与は1997年と2010年では、467万円から412万円へ55万円低下しています。非正規雇用は、1995年に1001万人(20.9%)でしたが、2012年には2042万人(38.2%)と増加しています。ちなみに日産のゴーン社長の年収は9億8700万円で時給にすると47.5万円です。

 

2.安倍自民党がめざすものと労働者の暮らし・権利

(1)アベノミクスの5本の矢

安倍首相は「世界で一番企業が活動しやすい国にする」と言って、金融緩和、財政出動、成長戦略、社会保障改革、消費税増税を進めています。規制改革会議は、限定正社員、労働時間の規制緩和、派遣労働の拡大を提起し、産業競争力会議は事業再編や解雇規制の緩和を提起しています。

(2)進行する税・社会保障の一体改革

消費税増税は既定路線であるかのように、押し付けようとしています。社会保障改革推進法は、「三党合意」によって2012年8月に成立しましたが、日弁連会長は「国による生存権保障及び社会保障制度の理念ものものを否定するに等しく、日本国憲法25条に抵触するおそれがある」と声明を出しました。

3.日本国憲法と社会権

日本国憲法における社会権の構造は、基底に憲法前文があり、25条で生存権保障、26条で教育権、27条で勤労権、28条で団結権をおいています。労働組合法は、戦後の民主化の過程で、憲法に先んじて制定されており、民主主義と経済復興の担い手として、労働組合が位置づけられています。

4.憲法を活かすことが憲法を守る道

労働者・労働組合のたたかいが、日本経済と社会保障再生のカギです。社会権を拡充していくうえでの労働組合の社会的役割が重要です。世界で一番働きやすい国、世界で一番暮らしやすい国をめざしていきましょう。

 

憲法学習会Ⅱ兼勤労者通信大学スクーリング 「憲法と日米安保体制のせめぎ合い」~安倍改憲戦略の危険とその矛盾~

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6月16日午後2時より、憲法学習会Ⅱ兼勤労者通信大学スクーリングを開き18名が参加しました。

「憲法と日米安保体制のせめぎ合い~安倍改憲戦略の危険とその矛盾~」と題して山田敬男氏(労働者教育協会会長・現代史家)が講演をおこないました。(上の写真)その内容をお知らせします。

1、改憲戦略と7月参議院選挙

安倍首相の改憲への意欲は強烈だが、96条先行作戦が失敗し、世論が反発を強めると同時に、保守派や改憲派からも批判が出ています。また安倍首相の「侵略の定義は定まっていない」発言や、橋下大阪市長の「慰安婦制度が軍に必要」であったとの発言は、内外の批判にさらされ、改憲戦略に狂いを生じさせています。

2、改憲戦略の二つの作戦

改憲戦略は解釈改憲と明文改憲の二つの作戦で行われています。解釈改憲では、集団的自衛権問題の政府解釈を変更することにより、9条を実質的に死滅化させようとしています。明文改憲では9条2項と96条を優先して改憲することが、日本経団連を含めた方針となっています。自民党は野党時代に、リベラル派が排除され、タカ派集団に変質しており、改憲草案では、平和主義が否定され、基本的人権よりも国家の利益が優先されています。

3、憲法問題を規定する日米関係

2000年の第1次「アーミテージ報告」では、「英米の特別な関係を、米日同盟のモデルと考えている」と述べられています。2005年の日米安全保障協議会で、日米が「グローバルな『共通の戦略目標』をもつことを確認」しました。2010年には、日本の防衛政策が専守防衛に見合う「基盤的防衛力」から、海外活動を重視する「動的防衛力の構築」に転換され、民主党政権のもとで、中東やアフリカへ自衛隊が派遣されました。2012年にアジア太平洋重視の新しいアメリカの軍事戦略が提起され、一方でアメリカ主導の国際システムに中国を引き込み、アジアではASEAN主導の地域機構にアメリカの影響力を強め、中国の影響力を制御するとともに、他方では中国を制御できない場合を想定して、日米同盟を一段と強化する戦略となっています。日米安保と憲法9条との矛盾が、ぎりぎりのところにきています。

4、草の根からの社会的運動が決定的な意味を持っている

平和の問題(憲法9条)と反貧困の課題(憲法25条)を結びつける、草の根からの運動が重要です。貧困の拡大は、戦争の危険性を増やしています。軍事同盟が時代遅れになっている現代で、東アジアの平和のルールを北東アジアに広げ、9条の役割の攻勢的な平和戦略が求められています。職場や地域で集団的関係が破壊されています。まともな人間関係を組織していくためにも、理不尽なことを許さないで、お互いを人間として認め合う関係が大切です。

 

憲法学習会での質問と回答

Q:自民党がタカ派集団に変質したということと、アメリカの支配者と一致しているのかが、よくわからない。

A:この間の自民党を見ていると、アメリカの軍事戦略をきちんと理解していないという風に思います。日本の支配層、自民党もそうだし防衛庁の官僚もそうだけれど、すぐ中国を包囲するという方向に力点を置くわけですね。それは彼らの思惑がそこにあるからです。だけど決してアメリカはソ連封じ込めのような形で中国を封じ込めるなんて思ってないわけです。中国をどうアメリカのコントロールの下に置くのか、そこに大きな力点があるわけです。

 

Q:自民党憲法草案の「天皇を戴く国家」という表現が意味するところは。

A:今の自民党案は第5条なんですが、天皇は国事に関する行為を行い、その後、国政に関する権能を有しないということが入っているんですね。だから戦後の新しい状況に見合った天皇中心の反動的な国家体制を考えているんだけれど、戦前への復帰というのは正確ではないと思います。

 

Q:現在の状況が、サッチャーが出てきた時や、ヒットラーが出てきたときと似た社会状況にあるのではという気がしますが。

A:日本の国民の中で、尖閣や竹島の問題をめぐって、対外的危機感が領土ナショナリズムという形で出てきています。もう一つは新自由主義的改革による格差と貧困の広がりによる社会的閉塞感という問題ですね。対外的危機感と社会的閉塞感が、改憲を含む反動的な攻勢の中で利用されるという問題に、どう対応するかということです。アジアの平和と安全をどう作っていくのかという、説得力ある議論が求められていると思います。また貧困と戦争の問題を、明らかにする必要があると思います。

 

Q:従軍慰安婦の問題で、文書があるという話を聞きましたが。

A:これは現代史家の吉見義明さんの作業というのが非常に大きかったと思います。彼は防衛庁で当時の軍関係の資料を調べて発見したわけです。つまり軍が直接、慰安婦制度に関与していたということを具体的な資料を使って明らかにしてメディアで発表されました。吉見さんの研究は、大月書店から資料集で出ています。

 

Q:国家権力の中枢である官僚が憲法改悪にどういう見地を持っているか。

A:いわゆる高度成長を推進した自民党政治の路線と対応する形で、内閣法制局による集団的自衛権の否定ということが出てきていると思います。この路線は、岸、中曽根、安倍から経済主義と批判されるわけですが、この従来の路線が構造改革と官僚の再編成によって、国や社会のあり様が変わろうとしています。