7月3日(木)静岡市職員会館にて、静岡市労連の書記さんたちを対象に、「勤通大基礎コース」の第1回学習会が行われました。受講生は20代、30代、40台の3人です。最初に自己紹介を行いました。精神保健福祉士の仕事をしていて専従になった人、就活後、2回ほど職場を変わり、組合の仕事に興味をもって書記に応募した人、労働者の権利とは無縁の職場で働いていて、ひょんなことから書記になった人など様々です。労働組合の仕事をすることのやりがいとともに、運動をしていく中での矛盾などが率直に話されました。今後の学習の仕方は、みんなで疑問を出し合って討論しながら進めていくことになりました。(多田)
3月11日(火)午後5時45分より学習会を行いました。受講生5人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回のテーマは「現代社会と社会変革」です。
「現代社会と社会変革」
●現代はどのような時代か
1.20世紀の人類史的な変化
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争
① 植民地体制の崩壊
20世紀初頭:アジア・アフリカ・ラテンアメリカは完全に分割支配
第二次世界大戦前:世界の独立国は約60ヵ国(現在は196カ国)
1960年:国連総会で「植民地独立付与宣言」(植民地支配の不当性確認)
20世紀後半:植民地支配の完全な崩壊
② 民主主義と人権の発展
・国家の形態が君主制から民主共和制に転換(20世紀に君主制を廃止:66カ国)
・現代の人権=自由権(政治的市民的自由)と社会権(生存、教育、労働)の結合
③ 平和の国際機構と「戦争の違法化」原則
・国際連盟、国際連合、非同盟運動
・不戦条約:1928年「戦争放棄にかんする条約」(日本国憲法の平和原則)
・国連憲章:「戦争の違法化」原則
2.現代世界を左右する3つの流れ
①資本主義の限界が問われるようになった
・資本主義は恐慌や不況を乗り越えることができず、貧困問題を解決できない。
・地球の環境問題などの深刻化によって「人類の生存」の危機が現実的な問題になる。
・南北問題が深刻になっている。
②アジア・アフリカ・ラテンアメリカの社会変革と地域の自立と連帯をめざす共同体づくり
・TAC(東南アジア友好協力条約:1976年):ASEANが中心となり締結、紛争の平和的解決
・SCO(上海協力機構:2001年):中央アジアにおける地域共同体
・CICA(アジア相互援助・信頼醸成会議:2002年):アジア総人口の90%、21ヵ国加盟
・UNASUR(南米諸国連合:2007年):経済協力、核兵器のない世界、国連憲章の尊重
・AU(アフリカ連合:2002年):政治的経済的統合の実現、紛争の予防解決
④ 社会主義をめざす国ぐにの動向
・中国、ベトナム、キューバ
・「市場経済をつうじて社会主義へ」という路線(中国、ベトナム)
●現代国家の特徴と現代の民主主義
1.現代国家と支配のしくみ
○国家独占資本主義と現代国家
経済的支配階級=財界・大企業(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)
財界と国家の「癒着」
○執行権力の拡大強化
執行権力=政府・官僚機構、軍事機構
議会制度の空洞化(議会から執行権力への重心移動)
○三者同盟(三角同盟)
三者同盟=政・財・官の癒着構造
政権政党の幹部、財界、官僚機構の上層部(原発利益共同体)
○2つの統治方法
①国民を力で押さえる権力的支配(警察や軍隊による弾圧)
②国民を誘導し一定の方向に統合(企業、学校教育、マスメディア、宗教組織)
○国家形態と民主共和制
・君主制:世襲の君主を元首とする(国の数で世界の15%、人口で8%)
・共和制:有権者から選ばれた代表を通じて政治を行う(大統領独裁、民主共和制)
○民主共和制が「最良の国家形態」
・男女普通選挙にもとづく議会制民主主義が確立している共和制、三権分立
○選挙制度と民主的改革
民主共和制を実現するためには選挙制度の民主化が大事、比例代表制が民主的
2.現代の民主主義と人権
○民主主義とは
国民主権原則にもとづく政治制度
政治制度、国民運動、民主主義思想という3つの側面
○人権とは
人間らしく生きる権利、幸福を追求する権利
○市民革命(ブルジョア革命)と近代民主主義
・イギリス名誉革命(1688年)、アメリカ独立宣言(1776年)、フランス革命(1789年)
・近代民主主義=国民主権や基本的人権の尊重などの政治制度と思想
○社会権の登場
・社会権=基本的人権のうち、国家によって人間らしい生活を保障させる権利
生存権(社会保障、教育、労働権、労働基本権)
3.民主主義の発展と社会主義
○大企業への民主的規制=資本主義の枠のなかでの民主的改革
・大企業の社会的責任:労働条件、雇用、中小企業、地域経済、環境
・法律による規制を大企業本位から国民本位に
・民主主義的改革の徹底後、資本主義の矛盾を解決する社会主義的変革を提起
○空想的社会主義
・サン・シモン:地主・金利生活者の支配に反対
・フーリエ:産業や暴力による搾取や貧民の発生を告発
・オーウェン:失業問題の解決のために共同体建設を実験
○科学的社会主義の成立
・マルクス:資本主義の分析と批判、労働者の人間的発達と社会変革
・エンゲルス:イギリスの都市貧困者の調査、資本論の完成
○社会主義を考える視点
・ソ連社会の変質:スターリンによる国民弾圧と粛清、大国主義的覇権主義
・資本主義の成果を受け継ぐ:生産力、議会制民主主義、人間の個性
・利潤第一主義の克服:貧困、失業、不況、南北問題、地球環境問題の解決
○生産手段の社会化を土台とする社会
・生活手段は対象外、生産者が主役
●現代の社会変革と労働者・国民のたたかい
1.現代における階級と階級闘争
○労働者とは
労働力を売り、働いて賃金を得て生活している人。生産の担い手。
○階級闘争の3つの側面
・経済闘争:賃上げ、経済的利益をまもるたたかい
・政治闘争:法律や制度の改良、平和と民主主義の擁護、政治権力の獲得
・思想・文化闘争:資本家階級の思想攻撃とのたたかい
○労働者階級の政党
全国的な階級闘争、政治闘争を推進する組織。
2.現代の社会変革の特徴とその推進力
○多数者革命
多数者による多数者のための革命(2010年:労働者82.1%、自営業12.9%)
○議会をつうじる革命
国民の多数の支持による議会をつうじる合法的な変革(政府、官僚、軍事機構)
○統一戦線による変革
立場の異なる多くの勢力が、共同の目標、共同の利害にもとづいて作る組織
○日本における統一戦線の展望
地域的統一戦線による革新自治体(1960年代~70年代)、全国革新懇(1981年)
3.労働組合運動の基本原則
○なぜ団結が必要か
生活と権利を守るために団結する(賃金抑制、雇用破壊、生活破壊)
○労働組合の誕生
イギリス:18世紀後半、産業革命、工場、労働者の増大、労働組合
1799年 労働組合を禁止する団結禁止法を制定
1824年 団結禁止法撤廃
1871年 労働組合法を成立
○労働組合の性格と組合民主主義
①労働者なら誰でも参加できる幅広い組織
②労働者階級の要求実現のために資本家階級とたたかう組織
労働組合の民主的運営が保障されることによって大きな力を発揮できる
○民主的で初歩的な3原則
①要求にもとづく団結、②資本からの独立、③政党からの独立
○政党との関係
①組合員の政党支持の自由、政治活動の自由を保障する
②相互の自主性を認め合い、一致する要求・政策で協力共同する
○労働組合の任務
①経済闘争:賃金や労働条件の維持・改善
②政治闘争:悪法に反対し労働者の利益になる法律の制定、平和と民主主義、政治革新
③思想・文化闘争:労働者・主権者としての自覚、権利意識
4.現代の多様な社会運動
○平和運動
原水爆禁止運動、ベトナム反戦運動、イラク戦争反対運動、基地反対闘争、9条の会運動
○市民(住民)運動
環境問題、原発問題、資源問題、人権擁護
○社会保障運動
医療・介護、生活保護、失業保障、奨学金制度、住宅制度
○女性運動
1975年:国連婦人年
1979年:女性差別撤廃条約(日本は1985年に批准)
1985年:男女雇用機会均等法(古い差別から新しい差別への転換)
○中小企業者運動
中小業者の切捨てや大企業の横暴に反対し、中小業者の営業と生活をまもる
○社会運動と労働運動との関連
社会運動と労働運動の連携によって、社会と政治を変革する可能性が生まれる
以上
2月19日(水)午後5時45分より学習会を行いました。受講生7人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回のテーマは「資本主義の発展と現代」です。
●独占資本主義および国家独占資本主義
1. 資本主義の発展と独占資本主義
○独占段階の資本主義(19世紀終わりころから)
独占=少数の大企業が、ある部門の商品の大部分を生産し、供給することをつうじて生産
と市場を支配している状態
○独占資本主義の5つの特徴
①生産の集積・集中と独占
自由競争の独占への転化
独占の形態:カルテル・シンジケート(協定)、トラスト(企業合同)、コンツエルン
②銀行の新しい役割と金融資本の形成
金融資本:独占的銀行資本と独占的産業資本が、融合・癒着した新しいタイプの資本
6大企業集団(三菱、三井、住友、富士、第一、三和)90年代後半に解消・再編
3大メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)
③資本の輸出
過剰資本を外国に投資、 直接輸出(現地で工場をつくる)、間接輸出(現地企業への投資)、
国家資本の輸出(ODA:政府開発援助)
④国際独占体による世界の経済的分割
国際独占体:各国の金融資本のなかから世界市場を少数の独占企業によって支配する
⑤帝国主義国による世界の領土的分割
国際独占体は、自らの権益をまもり、拡大していくために、自国の政府を動かして外国の領土を奪い、植民地を拡大させてきた。経済的分割が世界の領土的分割へと進む
第一次世界大戦:勢力圏と植民地の再分割をめぐって帝国主義国どうしが武力衝突した帝国
主義戦争
金融寡頭制:少数の金融資本が、それぞれの国の経済・政治を支配すること
国内では民主主義の破壊(政治反動)、海外では他民族の抑圧
2.第2次世界大戦後における独占資本主義国の変化
第2次世界大戦=帝国主義戦争としてはじまったが、民族解放戦争や、反ファシズム民主主義戦争という面をもつ複合的な性格の戦争
第2次世界大戦後:ブレトンウッズ体制=アメリカを中心にする国際経済秩序(IMF+GATT)
独占資本主義の変化:①民主主義を求める国民の力が強化された
②植民地支配が崩壊して諸国の独立が達成された
③アメリカの力が圧倒的となった
3.国家独占資本主義の形成とその基本的しくみ
○国家独占資本主義の形成(1929年~)
国家独占資本主義=金融寡頭制のもとで国家の力を経済分野に介入させて、経済危機を先
送りし、経済成長を実現することで、大企業の搾取と支配を維持するしくみ
ケインズ政策:国家の経済的力を活用して、国内の総需要を管理・拡大し、失業の発生を
回避して経済成長をはかるという政策。(有効需要創出政策)「大きな政府」
1980年代以降、「小さな政府」が主張される。
新自由主義が登場。大企業の利益拡大のための自由放任政策。
○国際独占資本主義の基本的なしくみ
①国家財政の動因(大規模な公共事業)
②金融政策を手段とした経済管理、政策運営(金融緩和・引き締め)
③国公営企業や国有株式(国家による主要企業の株式所有)の活用
④経済・産業・労働政策とその法制化(企業法制、特定産業の振興、労働法改悪などの政策をふくむ)
○社会保障制度と所得再分配(労働者・国民の運動や政治的な力を反映)
ヨーロッパ:福祉国家=社会保障制度の拡充で国内需要を安定させ、経済成長を実現
アメリカ:軍事国家=軍事支出を中心にした内需拡大策
日本:土建国家=大型公共事業中心の内需拡大策
4.国家独占資本主義が意味するもの
① 独占資本主義の矛盾の深刻さをあらわす(国家の支えなしに資本主義を維持できない)
② 資本主義の次の社会(社会主義)に移行する物質的条件をつくりだす
(生産手段の集中、独占禁止法などの経済制度、社会保障制度、民主的規制の体系)
③ 経済と国家のあり方についてさまざまな矛盾を顕在化させ、民主的改革の条件を成熟させるとともに、社会変革を進める主体的勢力を強化していく
5.資本主義の基本的矛盾とその解決の道
・資本主義の基本的矛盾=利潤追求が推進力になって生産のための生産に突き進み、生産を社会的に制御できないこと(貧困と格差のひろがり、世界的な恐慌、環境破壊)
・基本的矛盾の解決=生産手段を社会化する(生産者が生産を管理していくこと)
●経済のグローバル化と日本経済
1.グローバル経済の特徴とアメリカの世界経済支配
○グローバル経済とアメリカン・グローバリゼーション
グローバル化:経済の地球規模化(1990年代以降、急速に進行)
政治・経済・文化・生活などの相互依存的な関係が世界的規模で再編
「アメリカン・グローバリゼーション」:アメリカを中心とする多国籍企業の世界経済への支配強化を軸として推進
○現代のグローバル経済の特徴
① 多国籍企業が国際独占体としてグローバルに運動している
発展途上国での低価格での競争、日本での賃下げと非正規労働者の増大
② 過剰な貨幣資本が蓄積されるなかで、投機的なマネーがグローバルに運動している
サブプライム問題:アメリカ発の金融危機が世界的不況と失業の拡大へ
○グローバル化をめぐる2つの流れのたたかい
・アメリカを中心とした多国籍企業の利潤追求を強化させる経済秩序の押し付け
・民主的な国際経済秩序を確立(労働者の権利をまもり、貧困と格差をなくし、金融経済を規制し、地球環境をまもる)
2.日本経済の特徴と海外進出を強める日本企業
○ルールなき資本主義
長時間労働、雇用保障、女性差別、外国人労働者差別
法人税、引当金・準備金制度(利益を小さく見せかけて税金を軽くする)
○対米従属の資本主義
① 日本政府はアメリカ国債を買い、ドルの暴落を防ぎ、アメリカの財政破綻を救っている
② アメリカの経済界の意向に従って経済政策をおこなっている(不良債権処理、郵政民営化、農産物自由化)
③ 日本が依存する資源の多くは、アメリカの影響下にある国・企業からのもの
④ アメリカの主導のもとで、東アジアでの域内協力において主導権を握ろうとしている
(ASEAN+日本、中国、韓国、モンゴル)
○海外進出を進める日本企業
グローバルな生産体制の構築、下請け中小企業の切捨てと再編、工場閉鎖、
合併や業務提携による再編、リストラ、賃金や雇用制度の変更、労働者の分断
2004年度の製造業全体の海外生産比率:16.2%、現地従業員数:406万人
2011年度の製造業全体の海外生産比率:18.4%、現地従業員数:523万人
3.新自由主義と財界主導の「構造改革」路線
① 労働法制の規制緩和による「働くルール」の破壊(派遣法、限定正社員、国家戦略特区)
② 社会保障の国民負担の拡大と給付削減(雇用保険、年金、医療保険)
③ 国民生活に不可欠な部分を民営化し、企業の利潤の場に転換(郵政、保育)
④ 農業や自営業などを「生産性が低い」として縮小(農業の危機、地域経済の衰退)
⑤ 市町村合併を強行して地方交付税を削減、公共サービスの低下
⑥ 高額所得者と大企業への減税
4.日本経済の民主的改革の方向
日本経済の安定的な発展のカギは、個人消費を拡大させること
国民生活中心に切りかえる民主的改革
① 経済活動に民主的ルールをつくり、まもらせる
② 財政・社会保障の民主的改革
③ アメリカ追随の経済政策をあらため、多国籍企業中心のWTO体制など国際経済の変革につとめる
以上
1月21日(火)午後5時45分より学習会を行いました。受講生5人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回のテーマは「利潤の源泉――剰余価値の搾取」と「資本蓄積と貧困化、不況、恐慌」です。
●利潤の源泉――剰余価値の搾取
1.もうけのための生産
2.搾取のしくみ―剰余価値の生産
○もうけは生産過程で生まれる( )
○生産力の発展の結果と剰余価値(=もうけの源泉)
3.必要労働時間と剰余労働時間―剰余価値率
○必要労働時間=労働者が自分の労働力の価値に等しい価値を生み出す労働時間(ex2時間)
○剰余労働時間=必要労働時間を超えて働く時間(ex6時間)
○剰余価値率=剰余労働時間(6時間)/必要労働時間(2時間)x100=300%
○資本=資本家と労働者の生産関係(=搾取関係)のもとで剰余価値を生みだす価値(貨幣)
4.搾取強化の諸方法
○労働時間の延長=剰余労働時間を延長する(労働時間短縮の要求)
○労働生産性の向上=同じ労働時間内で労働強度の変化なしに、より多く生産物をつくる
○労働密度の増大=機械のスピードアップや作業範囲の拡大
○賃金の労働力の価値以下への切下げ=賃金は労働力の需給関係と労資の力関係で決まる
5.労資の利害は根本的に対立している
○賃金奴隷=労働者は雇われなければ(搾取されなければ)生きていけない
○中小企業での搾取と、大企業による中小企業からの収奪
=労働者は中小企業家の搾取とたたかうだけでなく、大企業の横暴ともたたかうことが必要
○欧米諸国の時短闘争と「働くルール」の確立
1847年:イギリスで成人女性労働者に10時間労働法が制定
1886年:アメリカのシカゴで8時間労働を求めてゼネスト(メーデーの起源)
1917年:ソ連で8時間労働制が確立
1919年:ILO設立、8時間労働制が成立
第二次大戦後:週休2日制、週35時間労働、1日7時間労働への運動
○日本の「ルールなき資本主義」
1947年:8時間労働となったが上限規制がない(36協定)
1987年:週40時間労働が提起(アメリカとの貿易摩擦)
1997年:全企業に週40時間労働が適用(労働時間制度の変更:変形、裁量、みなし)
○経済闘争の意義と限界、搾取制度の廃止へ
搾取の結果にたいする闘争と、搾取制度そのものをなくす変革
補論 非生産労働者も搾取されている
商業、金融、サービス業、公務(非現業)労働は、価値も剰余価値も生まない非生産的労働
1. 商業労働者も搾取されている
商業資本家は、産業資本家から商品を仕入れ、それを販売することによって、生産労働者がつくりだした剰余価値の一部(その剰余価値から商業労働者の賃金と経費を引いた残り)を商業利潤として手に入れる
2. 金融労働者も搾取されている
金融部門の資本家は、産業資本家などに貨幣を貸し付けて手に入れる利子は、もともと生産労働者がつくりだした剰余価値の一部。金融労働者の賃金と経費を差し引いた残りを利潤として手に入れる
3. サービス部門の労働者も搾取されている
医療、福祉、保育、教育、娯楽、観光、宿泊などの部門。すべての部門の労働者の賃金や利潤が分配された後、サービス部門の資本家はサービスを提供することで、国民所得の再分配過程をつうじて、サービス利潤を手に入れる。サービス労働者の賃金と経費を差し引いた残りを利潤として手に入れる
4. 公務員労働者も「搾取」されている
公務員労働者の賃金は、国民から徴収した税金から支払われる。その水準は労働力の価
値であり、賃金分以上の労働を間接的に「搾取」されている。
* 協同組合の労働者も搾取されている
① 企業間競争のなかで経営を維持、発展させていくために、労働の成果の一部を「蓄積」していかなければならない。
② 全出資者=全労働者ではなく、労働者は協同組合に雇われて働いている
③ 資金を借り入れした利息分は、労働者の剰余労働の一部をあてる
協同組合で働く労働者の実践
① 賃金や労働条件の改善を要求し、理事者側が非民主的運営をおこない労働者に不当なしわよせをおこなってくる場合には断固としてたたかう
② 全国的に賃金、労働時間、労働条件の改善をめざす制度闘争を行う
③ 協同組合の健全な発展をめざし、理事者側に協同組合の理念と原則にもとづく民主的運営を要求し、労働組合の立場から参加し協力していく
●資本蓄積と貧困化、不況、恐慌
1.資本の蓄積と資本構成の高度化
○資本主義的再生産
資本蓄積=拡大再生産によって資本規模を大きくしていくこと。
○資本の集積と資本の集中
資本の集積=個々の資本による資本の蓄積、
資本の集中=いくつかの資本が合同して資本規模がおおきくなること
○資本構成の高度化=不変資本(生産手段に投下される資本)の割合が可変資本(労働力に
投下される資本)の割合に対して、相対的に大きくなること
2.相対的過剰人口の形成
○相対的過剰人口(=失業者・半失業者)は、働くことのできる労働者の総数に比べて、資本が雇い入れようとする労働者の数が相対的に少なくなる結果、生まれる。
3.資本主義社会における相対的過剰人口
○資本主義的蓄積の一般的法則と貧困化
一方の極における富の蓄積と他方の極における貧困の蓄積は、必然的な過程として進行
○貧困化とは何か
絶対的貧困=食うや食わずの貧乏
相対的貧困=①資本家と労働者の格差の拡大、
②労働者の生活水準は、新たな生活欲求の社会的水準を満たさない
③労働条件の悪化は、生活と安全を脅かす社会問題になる
4.不況・恐慌の原因と諸結果
○過剰生産による不況・恐慌
必要なのだけれどお金がなくて買えない、そのためにものが売れなくて過剰になる
○景気循環、不況・恐慌の原因
①生産と消費の矛盾
②生産部門間の不均衡
○不況・恐慌とその結果
労働者や勤労国民に失業・賃下げをふくむ労働条件の悪化、中小企業の経営破たん、
大企業はチャンスととらえ、リストラ、吸収合併などで独占体制を強化する
(投機的資本、大企業の内部留保、法人税減税)
労働運動や政治運動の高まり
12月6日(金)午後6時40分より学習会を行いました。受講生5人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。今回から「資本主義経済のしくみ」に入り、テーマは「商品と貨幣」と「資本主義社会と労働者・賃金」です。
経済学=資本主義社会の生産関係(生産・分配・交換・消費)のしくみを明らかにする
商品と貨幣(資本主義社会の富の単位は商品である)
1.資本主義社会の3つの特徴
①ほとんどの労働生産物が商品として生産され売買されている
(家庭菜園で家族が食べる野菜は商品ではない)
②人間の労働力までが商品として売買されている(労働は商品ではない:ILO)
③資本家は金もうけを目的・動機として商品生産を行っている(企業の社会的責任)
2.商品とは何か
〇商品の使用価値=人間にとっての必要・欲望を満たす性質をもったもの(食物、衣服、本)
〇商品の交換価値=商品どうしが一定の比率で交換される性質(物々交換、価格)
〇商品の価値=交換価値の本質=商品に含まれる人間労働によって作り出される
(富の源泉は?=金、商業、農業、労働)
3.商品生産労働の二重性
〇具体的有用労働=使用価値を作る具体的な労働(裁縫、木工、印刷)
〇抽象的人間労働=人間の精神的・肉体的エネルギーの発揮(価値の実体)
4.商品の価値の大きさ
〇商品を作るために社会のなかで平均的に必要な労働時間(商品交換を通じて決まる)
価値の大きさを貨幣で表現したものが価格(貨幣も商品のひとつ)
5.貨幣とは何か
○商品の価値をあらわす形態と等価物
1本のネクタイ=10冊のノート(人間の関係を物の関係で表す:反省関係)
(1本のネクタイの価値が、10冊のノートによって表される)ノートは等価物
〇一般的等価物
一般的等価物=他のすべての商品の価値を表す商品(歴史、地域により異なる)
(毛皮、布地、羊、貝殻、米、塩、金、銀、銅)
○貨幣と価格
貨幣=一般的等価物の役割をひとり占めすることになった商品(最終的に金)
価格=商品の価値を貨幣の一定量で表したもの
(1本のネクタイは金2グラム→金1グラムは1000円→1本のネクタイは2000円)
(ポンド、マルク、両は重さの単位が、貨幣の単位になった)
○鋳貨・紙幣
金鋳貨(銅貨、銀貨)→紙幣(法律によって強制的に通用力をもたせる)
6.価値法則とその作用
○価値法則=商品の価値の大きさは、その商品を生産するのに社会的に必要な労働時間の
大きさによって決まる。商品の実際の価格は、価値を中心にして、需要と供給
の関係によって変動する
○価値法則は、それぞれの生産部門への生産手段と労働力の配分を、自然発生的に調節する
(産業構造の変化、リストラ、失業、職業訓練)
○価値法則は、競争と生産力の発展を促進する
(生産性向上でより少ない労働時間で生産することで、より多くのもうけを獲得する)
○価値法則は、社会の階層分化を速め、経済的不平等を拡大する(富と貧困の蓄積)
資本主義社会と労働者・賃金
1.労働者とは
〇労働者=生産手段をもっていないために、労働力を商品として売り、賃金を受け取って
生活している人々(賃金労働者)
〇二重の意味で自由な存在
① 身分的に他人に隷属していない。人格的に自由(会社の奴隷ではない)
② 生産手段を所有していない。生産手段の所有から切り離された自由(失業の自由)
2.賃金とは何か
〇賃金は、労働の価格であるかのように見えるけれど、実は労働力の価格である。
労働力を時間ぎめで売る。(自由時間が労働者の人間的発達を保障する)
〇労働力と労働のちがい
労働力=人間の身体に備わっている、働く能力のこと(生産手段と結びついて労働できる)
労働=労働力の使用、消費のこと(「同一労働同一賃金」は差別賃金の是正が目的)
3.賃金は労働力の価格
〇労働力の価値の大きさは、労働力をつくるために社会的に平均的な労働時間の大きさに
よって決まる。(人間の生の再生産)
労働力をつくるために社会的に必要な労働時間は、労働力を再生産するために必要な生活
手段を再生産するための労働時間の大きさによって決まる。(間接的に決まる)
〇労働力の価値の大きさを決める3要素(労働者と家族の生計費)
① 労働者本人の生活手段の価値、②家族の生活手段の価値、③労働力の養成手段の価値
〇労働力の価値は、他の商品と違って、歴史的・社会的・文化的に変化する。
(今日では、雇い主から支払われる賃金と社会保障との合計が労働力の再生産費となる)
10月22日(火)午後5時45分より、約1時間にわたり学習会を行いました。受講生7人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。
今回のテーマは「社会の土台にある物質的生産」と「階級闘争と階級社会のあゆみ」です。
社会の土台にある物質的生産
1.社会と歴史のとらえ方
英雄史観、意識史観
史的唯物論(唯物史観):物質的生活手段(衣食住)の生産が基礎
人間は生活し、生産しなければならない:(生活手段の生産、生産手段の生産、人間関係の生産、欲求の生産、意識の生産)
社会的存在が意識を規定する:「黒人は奴隷である」という主張において、黒人=自然的存在、奴隷=社会的存在、黒人が奴隷になるのは、一定の社会関係の下においてだけである。(反省関係)
2.物質的生産と階級社会
生産力=労働+労働手段+労働対象
(生産手段)
生産関係=生産における人と人との関係、生産、分配、交換、消費の関係
生産手段の所有関係(生産手段を持っている人と働く人の関係)
生産力に見合った生産関係、所有関係がつくられる
石器・弓矢=原始共同社会、金属器・農耕=奴隷制・封建制、機械制大工業=資本主義
階級=生産手段の所有関係の地位、労働組織での役割、富を受け取る方法と大きさで区別
搾取=生産手段を所有する階級が、直接的生産者の労働の成果を無償で奪うこと
3.土台と上部構造
土台=生産諸関係の総体(経済的機構)、
上部構造=政治的・法的制度や社会意識諸形態
国家=階級支配のための権力組織、(軍隊、警察、官僚組織)
イデオロギー=体系化された思想や理論(法律、政治、宗教、芸術、哲学)、
社会の支配的な思想は支配階級の思想である
土台が上部構造の基本的性格を決める、上部構造は土台に反作用する
階級闘争と階級社会のあゆみ
1.階級闘争こそ社会発展の原動力
階級闘争=階級間の物質的利害の対立を基礎とするたたかい:奴隷蜂起、農民一揆、ストライキ(労働運動)
階級闘争の3つの側面:経済闘争、政治闘争、思想・文化闘争
生産力発展のばねとして作用していた生産関係が、やがて足かせに転化する
2.社会発展のあゆみ=前近代の階級社会
原始的な共同社会から、私的所有にもとづく階級社会への転換(6000年前)
階級社会の成立:農耕生産力の発展、首長、家族、支配と従属
「丸ごと奴隷制」の社会、ギリシア・ローマ型の奴隷制社会、封建制社会
奴隷や農奴のたたかいは、歴史を前進させる役割をはたしたが、彼らは次の社会における生産力の中心的担い手ではなかった
3.社会発展のあゆみ=近代の階級社会・資本主義
16世紀なかば:毛織物生産、マニュファクチュア(工場制手工業)、
16~18世紀:絶対主義国家、海外からの収奪
17~18世紀:市民革命(イギリス、フランス、アメリカ)
18世紀後半~19世紀はじめ:産業革命
資本主義の歴史的役割=生産力の飛躍的発展と独立した個人
資本主義の限界:貧困や格差、環境破壊、拝金主義、孤立した個人
*環境問題を考える
地域で起きる環境破壊:
1960年代後半:水俣病(熊本、新潟)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病(富山)、
1970年代:大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音
1980年代:ハイテク産業による土壌汚染、ダイオキシン汚染
地球規模の環境汚染:地球温暖化、酸性雨、海洋汚染、砂漠化、熱帯雨林の減少
環境破壊の理由:自然の復讐、利潤第一主義
経済のあり方を、自然と調和的なものに変えていくことが、21世紀の人類的課題
労組執行部のメンバー3名が受講している。学習会は、今回で5回目。
組合事務所での学習会は、5月末にスタートした。一回目はお互いの自己紹介の後、報告をチューターの長坂が行った。これからの日程説明とこれからの進め方を協議して、テキストの構成を説明し、「第1章 労働組合とは」に入った。テキストをもとに話をし、労働者階級の内部構成の変化の表、非正規雇用労働者の内訳などを資料として説明に使った。2回目からは、3名の受講者が輪番で分担して、テキストをまとめてレポートする方法で行うことにした。
6月末の2回目は担当者が5ページにわたってテキストの要点をまとめたもので説明した。3名とも勤務が忙しくて、あまり論議はできなかったが、チューターが途中で職場の実態の質問をしながら内容の確認もした。
3回目、4回目は次の担当者がすすめていったが、チューターが参加できず、詳しい様子は分からない。
5回目(第5章;労働組合を強く大きく)を、9月25日に行った。受講者3名はともに豊富な組合活動の経験があり、学習の理解が進んでいるので、今回は、テキストの内容のポイントを押さえながら、テキストの内容との関わりで、今の職場で抱えている課題を出し合って論議をして行ければというチューターの事前の提起に応えた進め方をしてくれた。当局の管理上の問題点に対して、具体的にどう取り組めばいいのかで、これまでにない時間をかけた意見交換ができ、3名とも一定の見通しを得た学習会になったと思う。
3名のうちの一人は、2回目のテストも郵送するばかりのところまできている。
次回の6章で終わりになるが、さらに充実した学習ができるようにしたい。
報告・長坂
9月17日(火)午後5時45分より、約1時間にわたり学習会を行いました。受講生4人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき報告し、その後自由討論を行いました。
今回のテーマは「理論と実践」と「社会と社会の形成」です。
理論と実践
事実から出発すること、本質をとらえて働きかけること、世界を変える人間の力を拡大していくことが重要です。
理論とは、ものごとを説明するためのまとまった知識です。実践とは、一定の目的をもって自然や社会に働きかけ、それを変革する人間の活動です。例えば、労働、実験、労働運動などがあります。
認識と行動が結びつくためには、価値判断が必要になります。
マルクスの言葉を紹介します。「哲学者たちは、世界を様々に解釈してきただけである。肝心なのは、それを変革することである。」(フォイエルバッハに関するテーゼ11)
社会と社会の形成
人間の生き方の特徴として、次の3点があげられます。
①ものを生産して生活している。
②精神的生活をしている。
③複雑な社会関係のもとで生きている。
人間社会とは、生産をもとにした人と人とのつながりの総体を意味します。
マルクスは次のように言っています。「人間的本質は、その現実性においては社会的諸関係の総体である。」(フォイエルバッハに関するテーゼ6)
人類の誕生は600~700万年前で、直立2足歩行を始めました。
自由になった両手で、道具を使う活動=労働を行い、労働によって人間がつくられました。
道具としての石器の製作、自然の性質を理解し先を見通す力の獲得、集団労働の合図としての言語の発生、肉食生活などで、人間が発展してきました。
労働は集団的・社会的活動で、協働という形で行われました。労働によって、群れ関係から人間社会へ変化してきました。
最初の人間社会は、原始的な共同社会で、血縁的な小集団で、助け合いながら生活していました。農耕と定住が始まったのは1.2万年前で、その後、人口増大や余剰生産物が増加します。
文明社会は、6000年前、メソポタミア、エジプト、中国、インドなどで発展しました。生産力の発展や生活水準の向上が行われる反面、富の収奪や権力による人間支配、いわゆる階級社会が生まれました。
以上
1 三島共立病院内の「基礎コース」の件。
8月20日実施 私を入れて7名参加。うち一人は、元高教組の退職者で哲学や史的唯物論について勉強したいということで前々回から参加していまます。史的唯物論についての2回目。詳しい中身は、参加者でもある組合幹部の大庭さんが、ニュースを出してくれていますのでそれを添付します。ニュースは3号めになりますが1~2も面白いです。それはそれとして学習がなかなか進まないのには理由があります。一つはやはりむつかしい内容であることで、字句の説明などをしているだけでも結構時間がかかります。それと、これは参加者の反省でもあるのですが、事前になかなか読めないということです。時間もないが内容がチンプンカンプンで眠気が襲ってくるとのこと。それではダメなのでとにかく 分からなくても読んで来ようということ羽確認しました。しかし、チューターをしている参加者の聞間さんは何度も読み返しているらしく、何がわからないか具体的です。
◇ 静岡民医労勤通大ニュース№3(PDF版)
8月9日(金)午後5時45分より、約1時間にわたり民医労静岡支部「基礎コース」学習会を行いました。受講生5人が参加しました。最初にチューターの多田が、レジュメに基づき20分間報告し、その後自由討論を行いました。
今回のテーマは「弁証法」です。
最初に「弁証法とは?」ということで、いろんな人の言葉を紹介しました。
・「弁論によって真理を証明する方法=問答法」(ソクラテス)
・「矛盾に関する学問」(ヘーゲル)
・「肯定的なもののなかに否定的なものをとらえ、生成した一切のものを運動の流れの中でとらえる」(マルクス)
・「世界の一般的な運動(発展)法則に関する科学」(エンゲルス)
・「対立物の統一と闘争に関する学説」(レーニン)
次に、弁証法で取り扱う運動や概念について紹介しました。
○質と量、移行
・生成と消滅、変化
・量的変化から質的変化への転化、質的変化から量的変化への転化
○本質と現象、反省(反映)
・同一、区別、対立、矛盾、対立物の統一と闘争=弁証法的矛盾
・全体と部分、可能性と現実性、偶然性と必然性、原因と結果
○主体と客体、発展
・弁証法的否定、否定の否定
・単純なものから複雑なものへ、低い質のものから高い質のものへ
最後に、「弁証法的思考のために」ということで、以下を指摘しました。
・水泳を習うのと同じで、弁証法的思考には訓練が必要
・現実に具体的に現れている矛盾を分析する
・内在的、総体的、歴史的にとらえ、現実を乗り越えていく力を発見する
自由討論では、次のような意見がありました。
・難しくて、よくわからない
・どうせ変わらないと思うのではなく、現実から出発することが大切
・対立するものの見方を通じて、より高い認識に到達することが重要
次回のテーマは「理論と実践、社会の形成」です。