静岡地区春闘学習会


2月3日、「あざれあ」において静岡地区春闘学習会が行われ22名が参加ました。「大軍拡の背景にあるアメリカ世界戦略と私たちのくらし」と題して、増田正人氏(法政大学教授)が講演しました。
日本の大軍拡はアメリカの要求によるものですが、アメリカの世界戦略が中国との関係では、米中蜜月の時代から米中対立という関係に変化してきました。
中国は1978年以降の開放政策で、アメリカ・欧州の多国籍企業を国内に誘致し、相互依存関係を強め、経済的封じ込めができない状況を作る路線を進めました。
またアメリカは1995年のWTO発足を契機に知財重視の世界戦略をとり、多国籍企業化を進める中で高成長を実現するために、アメリカ国内の労働集約的工程を発展途上国に移転し、その生産基盤を提供したのが東アジア諸国、特に中国でした。
中国は世界の工場として、アメリカICT企業の調達拠点となりましたが、製品に占める付加価値部分はアメリカの企業が獲得し、単なる生産の場としては中国経済の発展は望めないという認識になりました。2009年から中国の路線転換が始まり、低賃金と豊富な労働力に依拠した生産から、IT産業等先端産業の保護育成に取り組み、建国100年の2049年までに製造強国のトップをめざすとしています。
2017年のトランプ政権の登場から、アメリカの対中関与政策は転換し、バイデン政権になっても対中封じ込めの強化は変わりません。アメリカの目的は、先端技術とデジタル社会における利益の独占の維持と、中国に対する軍事的優位の確保です。
ただし最先端技術以外の工業製品、資源・エネルギーの生産ネットワークは今までと同じで、米中貿易は2022年に過去最高を更新しています。
バイデン政権の考え方は、気候変動危機に対応する新たな産業技術としてのグリーン・ニューディール政策と軍需産業基盤の確保です。アメリカの軍需産業は、国防上の観点から多国籍企業化してきませんでした。そのため生産コストが高く、それが軍事研究の制約となっています。
アメリカは米中経済の相互依存関係は維持しつつ、中国に依存しない仕組みの構築を図ろうとしています。中国封じ込め戦略におけるカギとなるのが日本です。自衛隊の軍事的強化と基地の運用能力の強化、そして日本の武器購入はアメリカの軍事産業基盤を強化し、さらに日本企業をアメリカの軍事産業に組み込むことにより、アメリカの軍需生産基盤の脆弱性を克服することを狙っています。
もし「台湾有事」が勃発すれば、被害を受けるのは、台湾、日本、中国等の東アジア諸国です。限定戦争にとどまる限り、アメリカや欧州は被害を受けません。アメリカの政策に追随することでは、日本経済や人々の暮らしはますますひどいものになってしまいます。

コメントは受け付けていません。