ブラック企業と安倍『雇用改革』 沼津学習会(沼津労組連・静岡県労働者学習協会 共催)


学習会沼津学習会(沼津労組連・静岡県労働者学習協会 共催)でブラック企業と安倍『雇用改革』を開きました。講師は、岩橋祐治 氏(全労連政策総合局長・元京都総評議長)がおこないました。

 ブラック企業問題

ブラック企業とは、若者を違法・過酷な労働条件で働かせ、人格が崩壊するまでこき使い、モノのように使い捨て、使いつぶす企業のことです。昨年の参議院選挙を通じて大きな話題になりました。

厚生労働省は昨年、「若者の『使い捨て』が疑われる企業等への重点監督」を実施し、82%の企業が労基法違反、時間外労働が80時間超過の企業が24%でした。

ブラック企業が跋扈(ばっこ)する理由は次の通りです。

①労働組合の組織率が73年に33、1%だったのが、昨年は17、7%まで低下しています。

②非正規労働者が2千万人を超え、全体の4割を占め、年収200万円以下のワーキングプアが1千万人を超えるという状況です。

③新卒者の深刻な就職難があります。

④労働法制の「規制緩和」・改悪が進んでいます。

ブラック企業を根絶する取り組みとして、以下の点があげられます。

①「企業はコンプライアンス(法令遵守義務)を守れ!」「その社会的責任(CSR)を果たせ!」という声をあげる。

②長時間・過密労働を是正させ、サービス残業を一掃させる。

③パワハラなどの違法行為、労働者の人格権侵害を止めさせる。

④離職者が異常に多い企業、過労死・過労自殺をさせた企業、36協定違反やサービス残業を強要した企業の名前を公表し、社会的な制裁を与えていく。

⑤労働基準監督官を増やす。

⑥学校で、憲法、労働基準法、労働組合法などの教育を強める。

⑦労働組合に入り、労働組合を作り、たたかうこと。

 安倍『雇用改革』

安倍内閣の「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」とは、「日本を世界で一番労働者が働きづらい国にする」ということ、「日本を世界で一番国民が生きづらい国にする」ということです。

①派遣労働の全面解禁

戦後直後に制定された職業安定法は、「労働者供給事業」を(労働組合が行う場合を除いて)全面的に禁止しました。

戦後労働法が禁止してきた間接労働を一定の条件のもとで解禁したのが労働者派遣法です。その一定の条件とは①常用雇用の代替防止、②高度で専門的な業務に限定、③臨時的・一時的な業務に限定です。今回、その規制原則そのものを完全に骨抜きにし、派遣労働の恒常化・永続化を狙っています。

今でも世界的に見て異常な日本の派遣制度が、世界で一番醜悪でグロテスクな制度になってしまいます。外国では、間接雇用を文字通り、「一時的・臨時的な仕事」に限定されています。派遣法が全面改悪されると、ほとんどの正社員の派遣社員への置き換えが爆発的に進む可能性もあります。

②限定正社員制度の整備

職種や地域、労働時間等を限定した「限定性社員」(ジョブ型正社員)の雇用ルールの整備とは、賃金・労働条件がこれまでの「(無限定)正社員」と比べて劣悪な、その地域にある事業所がなくなれば、またその職種・仕事がなくなればいつでも解雇できる不安定な雇用の、「無期雇用」だけれど「解雇自由」な「正規」労働者(=「名ばかり正社員」)をつくりだすことです。

就業規則の解雇事由に「就業の場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加すれば、たとえ整理解雇四要件が適用されても、無限定正社員とは異なる判例が多く見られると主張しています。

しかし、当たり前のことですが、正社員は本来限定性社員であり、労働力を時間決めで売っているのであり、決して無限定に販売しているのではありません。

今必要なのは、「正社員改革」ではなく、派遣、有期などの「非正規雇用」の制限と「同一労働・同一賃金」、「均等待遇」原則の確立です。

③労働時間法制の見直し

今でも、長時間労働で、サービス残業が横行し、メンタルヘルス問題が深刻で、過労死・過労自殺も頻発しています。12年の「就業構造基本調査」によれば、日本の男性の15、4%、390万人もの労働者が過労死ラインを超える週60時間以上の労働をしています。これ以上の労働時間法制の規制緩和・改悪は絶対に許されません。

④民間職業紹介所の規制緩和

行き過ぎた雇用維持型から労働移動型への政策転換で、「失業なき労働移動の実現」と言っていますが、だまされてはいけません。OECDがまとめた解雇規制の強さ指標によれば「日本はOECD加盟34か国中25番目」であり、決して雇用維持型ではありません。

ハローワークの求人・求職情報の開放、民間人材ビジネスの活用、有料職業紹介事業を許可制から届出制へ、求職者からの手数料徴収の拡大が予定されています。憲法第27条の「勤労の権利」を、すべての労働者に保障するのは国の責務です。職業紹介は国の責任で無料で行うのが原則です。

たたかいの合言葉は「DECENT WORK FOR ALL!」(すべての人々にディーセントワークを!すべての労働者に働きがいのある人間らしい仕事を!)です。

 

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