「労働運動の今日的課題と学習教育運動」 総会記念講演


記念講演(山田氏)2014年6月29日、静岡県労働者学習協会第42回総会が静岡県評会議室開催されました。総会終了後「総会記念講演」として、労働者教育協会会長で現代史家の山田敬男さんが「労働運動の今日的課題と学習教育運動」と題して講演をおこないました。(写真は、講演をおこなう山田敬男さん)

 

「労働運動の今日的課題と学習教育運動」 山田敬男

(1)社会構造の変化の中で、運動の困難性をとらえる

①職場の団結力、闘争力の後退

職場、地域の集団的関係の破壊により、民主的関係の喪失や思いやり・暖かさがなくなってきています。また活動家集団の衰退により、世代継承が困難になっています。

②90年代半ば以降の職場社会の激変

新自由主義的構造「改革」によって社会の構造が大きくかえられてきました。「新時代の『日本的経営』」(1995年)による雇用戦略の変化で、非正規雇用の増大と成果主義の導入により、格差・貧困が常態化しています。

③人間らしく生きるのが難しくなっている

青年の二人に一人が非正規労働者で将来の夢を語ることができないで、「卒業→就職→社会的自立の一歩」というライフサイクルが崩壊しています。

正規労働者も成果主義の導入で、長時間過密労働のなかで生活と権利を脅かされており、メンタルヘルス問題と30歳代の自殺の増大、「自己実現系ワーカホリック」が広がっています。

長期化され、構造化された不安意識の中で、自己肯定感情が奪われるとともに仲間への関心が薄くなっています。

 

(2)まともな労働組合をめざして

①労働運動の団結の原則を考える

企業別労働組合の「改革」として、要求にもとづく職場闘争、地域における三つの活動、産業別統一闘争と国民的闘いとの結合があります。

まともな労働組合とは、生きづらさに耳を傾け、人間としてどう生きるかという視点から、すべての労働者を視野に、「納得」と「共感」にもとづく運動をすすめることです。

②職場における「まともな人間関係」の回復と組合民主主義

「まともな人間関係」として、自由に何でも言える関係を意識的につくること、「みんなで討論、みんなで決定、みんなで実践」が大切です。

③「まともな人間関係」に支えられた「魅力的な活動家集団」を

魅力的な「活動家集団」の育成をめぐって、仲間の気持ちを深く理解することこそ役員としての活動上の原点です。

④活動上のいくつかの問題

・自分たちの仕事、労働の社会的意味のとらえ直し

・地域と産別に支えられる職場の活動

・多忙化との闘い

・青年たちとの団結

 

 (3)学習教育運動の課題

①何をめざし何をやろうとしているのか

学習教育運動の目的は、労働者階級の階級的自覚の形成と発展のために、科学的社会主義の立場から基礎理論や情勢論を教育・普及することにあります。この目的のために、労働者教育協会と都道府県学習組織は、対等平等の立場から協力共同の努力を行っています。大衆的学習教育運動は、60年安保闘争以来、大衆的な運動として発展し、地域労働学校、『学習の友』、勤通大の三つが基本的な学習形態とされています。

科学的社会主義の立場に立つという意味は、運動における学習教育のなかみを規定しているのであり、運動参加者の党派的立場や世界観的な立場を直接規定しているのではありません。階級的自覚の形成には、民主主義的自覚と権利意識の成熟が重要です。

②学習教育運動の基本的あり方

協会や学習組織は他のどの政党や労働組合などの代行や補完的役割をするものでも

なく、科学的社会主義の立場に立つ大衆的な学習教育団体です。この運動をすすめるためにも、学習教育運動の活動家の育成や、学習教育の内容の改善の努力などがきわめて重要な課題です。

③2010年代の学習教育運動の基本的課題

第一は、学習教育の内容で、科学的社会主義の基礎的理論に関しても、情勢論に関しても、水準を質的に引き上げることが重要になっています。

第二には、学習教育の活動家を育成することがきわめて重要になっています。とくに青年たちにとって、魅力を感じる学習教育運動とは何かを検討することが大切です。

第三に、労働組合のローカルセンターとの協力共同がが求められています。同時に、労働者階級の「最大勢力」である未組織労働者にたいする働きかけが、大衆的学習教育運動にとってきわめて重要な課題になっています。

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