読後感


「憲法主義」内山奈月(AKB48)、南野森(しげる)(九州大学教授)PHP研究所;2014.7発行

「条文には書かれていない本質」という副題がついていたが、読んでの印象ではその副題よりも「憲法の全体構造がはらんでいる本質を解き明かす」といった副題を付けた方が的を得ていると思える本でした。

現在問題になっていることがらをほとんど取り上げ、「民主的正当性」という切り口で解明していくところは新鮮でしたし、憲法の各条文が持つ意味を深く理解させてくれる好書であり、憲法と法律の違いを深めている展開もよかったと思っています。

「AKB48では恋愛は禁止」が憲法違反になるかどうかで、南野教授と内山さんが意見交換をするところや、講義の後のレポートで内山さんが、自分の考えをさらに深めて示すところなど、今の若者の受け止め方の一端なのかとも思い、興味を持ちました。

何よりもよかったのは、一方的な講義ではなく、問いかけと答えるやり方・進め方で、教える側と学ぶ側が対話をしながら学習を深めていくスタイルが、読者も学習者の一員として学びに一緒に参加しているかのようで、読み出すと止まらない本でした。

若い人に勧めたい本であるだけでなく、憲法はだいたい分かっていると思っている人も読めば、なるほどと頷かせる個所がいくつも出てくることは間違いありません。憲法改悪がいよいよ日程に上ってきている現在、若い人たちが大いにこの本を手にし、読んでくれればと期待します。

2015.2.07

大井 学

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