勤労者通信大学スクーリング兼憲法学習会Ⅲ 「日本国憲法と働くルール・社会保障」

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勤労者通信大学スクーリング兼憲法学習会Ⅲが、2013年8月31日(土)15:00から静岡県評会議室において開催されました。勤労者通信大学受講生と一般聴講者を含め17名が参加しました。講演は「日本国憲法と働くルール・社会保障」、講演者は原冨悟氏(埼玉学習会議代表委員、元埼玉労連議長、勤通大労組コース教科委員、労働者教育協会常任理事)です。

講演内容は以下の通りです。

1.働くことと社会保障

(1)労働者の貧困を想像してみる

埼玉県内中小企業の平均賃金は、正社員312,829円(残業20,627円含)、男性336,666円、女性240,035円です。これに対し、S市の生活保護は、4人家族で301,270円(教育・住宅扶助・養育加算込み)となっており、正社員の平均賃金で残業がなければ、生活保護以下です。また母子家庭の3人家族で、生活保護293,940円(教育・住宅扶助・養育加算込み)となっており、女性の残業込みの賃金でも足りません。

就労世帯の10.4%、就労母子家庭の7割が生活保護基準以下の収入です。また稼働世帯で、可処分所得が生活保護基準よりも低い世帯は25.1%です。

埼玉県内の失業者数は17万人、このうち就職者は6千人、失業給付受給者は2.9万人(12年、月平均)となっています。

日本の自殺率は10万人当たり25人ですが、生活保護受給者の自殺率は55人と倍以上あります。

年収200万円で、国保料は27.4万円、国民年金18万円を支払わなければならず、社会保障負担が貧困に追い打ちをかける制度となっています。

(2)「構造改革」がもたらした格差構造

1997年と2010年を比較すると、企業の経常利益は15兆円から25兆円、大企業の内部留保は143兆円から266兆円と増加しています。また企業が保有する現金・預金は12年度末で225兆円と過去最大となっています。

これに対し、民間の平均給与は1997年と2010年では、467万円から412万円へ55万円低下しています。非正規雇用は、1995年に1001万人(20.9%)でしたが、2012年には2042万人(38.2%)と増加しています。ちなみに日産のゴーン社長の年収は9億8700万円で時給にすると47.5万円です。

 

2.安倍自民党がめざすものと労働者の暮らし・権利

(1)アベノミクスの5本の矢

安倍首相は「世界で一番企業が活動しやすい国にする」と言って、金融緩和、財政出動、成長戦略、社会保障改革、消費税増税を進めています。規制改革会議は、限定正社員、労働時間の規制緩和、派遣労働の拡大を提起し、産業競争力会議は事業再編や解雇規制の緩和を提起しています。

(2)進行する税・社会保障の一体改革

消費税増税は既定路線であるかのように、押し付けようとしています。社会保障改革推進法は、「三党合意」によって2012年8月に成立しましたが、日弁連会長は「国による生存権保障及び社会保障制度の理念ものものを否定するに等しく、日本国憲法25条に抵触するおそれがある」と声明を出しました。

3.日本国憲法と社会権

日本国憲法における社会権の構造は、基底に憲法前文があり、25条で生存権保障、26条で教育権、27条で勤労権、28条で団結権をおいています。労働組合法は、戦後の民主化の過程で、憲法に先んじて制定されており、民主主義と経済復興の担い手として、労働組合が位置づけられています。

4.憲法を活かすことが憲法を守る道

労働者・労働組合のたたかいが、日本経済と社会保障再生のカギです。社会権を拡充していくうえでの労働組合の社会的役割が重要です。世界で一番働きやすい国、世界で一番暮らしやすい国をめざしていきましょう。